まずは第1項を確認します。
▼会社法347条1項
347条のタイトルどおり、「種類株主総会における取締役又は監査役の選任等」についての条文の読み替えについての条文です。
個人的には、読みにくさNO.1の条文です。
可能な限り、かみ砕いて分かりやすく解説したいと思います。
347条1項は会社法108条1項9号、つまり取締役・監査役選任権付株式を発行している場合、以下の条文については読み替えが発生することを規定しています。
ちなみに、347条1項は、取締役・監査役選任権付株式のうち、取締役だけにスコープを当てた条文になります。
読み替え対象の条文
(1)会社法条329条1項(役員+会計監査人の選任)
(2)会社法条332条1項(取締役の任期)
(3)会社法条339条1項(役員+会計監査人の解任)
(4)会社法条341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
(5)会社法条344条の2の1項と2項(監査等委員である取締役の選任に関する監査等委員会の同意等)
具体例として、以下の会社を想定していきます。
株式会社X
普通株式
A種優先株式(取締役選任権付株式(会社法108条1項9号の定め)がある)
1個ずつ確認していきます。
会社法329条1項の元の条文は以下です。
会社法329条1項(読み替え前)
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
株主総会の部分を以下の様に読み替えます。
会社法329条1項(読み替え後)
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)については、第百八条第二項第九号に定める事項についての定款の定めに従い、各種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会)の決議によって選任する。
通常は、取締役は株主総会にて選任の決議をします。
しかし、取締役選任権付株式を発行している種類株式発行会社は、347条の読み替えによって、その種類の株式を構成員とする種類株主総会にて取締役を選任しなければなりません。
会社法332条1項の元の条文は以下です。
会社法332条1項(読み替え前)
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
株主総会の決議の部分を以下の様に読み替えます。
会社法332条1項(読み替え後)
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会(第四十一条第一項の規定により又は第九十条第一項の種類創立総会若しくは第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百二十九条第一項の種類株主総会において選任された取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)については、当該取締役の選任に係る種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(定款に別段の定めがある場合又は当該取締役の任期満了前に当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存在しなくなった場合にあっては、株主総会))の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
読み替えのなかに、さらにかっこ書きが複数あり、読むのが大変な条文です。。
原則、取締役の任期は2年のところ、定款または株主総会決議で、その任期を短縮することができる、という株主総会決議の部分に対して読み替えが発生しています。
ある3つの場合にて選任された取締役については、A種の種類株主総会にて、その任期を短縮することができる、ということを規定しています。
ある3つの場合とは以下になります。
・会社法41条1項(設立時役員等の選任の方法の特則)の規定により選任された取締役
・会社法90条1項(種類創立総会の決議による設立時取締役等の選任)の規定により選任された取締役
・会社法108条1項9号(異なる種類の株式)の規定により選任された取締役
上2つは、設立時取締役の話しで、3つ目は設立後に選任された取締役の話しです。
さらに、定款で別段の定めが可能、とあるので、定款に全体の株主総会にて取締役の任期を短縮できる旨の定めがあれば、A種の種類株主総会でなくとも、全体の株主総会の決議にて任期の短縮が可能です。
会社法339条1項の元の条文は以下です。
会社法339条1項(読み替え前)
役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
株主総会の決議の部分を以下の様に読み替えます。
会社法339条1項(読み替え後)
役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会(第四十一条第一項の規定により又は第九十条第一項の種類創立総会若しくは第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百二十九条第一項の種類株主総会において選任された取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)については、当該取締役の選任に係る種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(定款に別段の定めがある場合又は当該取締役の任期満了前に当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存在しなくなった場合にあっては、株主総会))の決議によって解任することができる。
置き換え部分は、(2)会社法条332条1項(取締役の任期)の読み替えと同じです。
つまり、(2)会社法条332条1項(取締役の任期)と同様に、上記3つの場合にて選任された取締役については、A種の種類株主総会にて解任する必要がある旨を定めています。
さらに、定款で別段の定めが可能、とあるので、定款に全体の株主総会にて取締役を解任できる旨の定めがあれば、A種の種類株主総会でなくとも、全体の株主総会の決議にて解任することが可能です。
会社法341条の元の条文は以下です。
会社法341条(読み替え前)
第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
2箇所読み替えが発生します。第三百九条第一項と株主総会の部分です。
まずは、第三百九条第一項の読み替え部分を確認します。
会社法341条(読み替え後)
第三百九条第一項及び第三百二十四条の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
会社法309条1項は、株主総会の普通決議についての条文です。
会社法324条は、種類株主総会の決議についての条文です。
読み替えが発生するので、種類株主総会にて取締役を選任・解任する場合、特別な普通決議にて決議を取る必要があります。
続いて、株主総会の部分を確認します。
会社法341条(読み替え後)
第三百九条第一項及び第三百二十四条の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百二十九条第一項及び第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
会社法329条1項は(1)で、も339条1項は(3)で解説していますが、種類株主総会にて取締役を選任・解任する場合、特別な普通決議にて決議を取る必要があるということを規定しています。
会社法344条の2の1項の元の条文は以下です。
会社法344条の2の1項(読み替え前)
取締役は、監査等委員会がある場合において、監査等委員である取締役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査等委員会の同意を得なければならない。
株主総会の部分を以下の様に読み替えます。
会社法344条の2の1項(読み替え後)
取締役は、監査等委員会がある場合において、監査等委員である取締役の選任に関する議案を第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百二十九条第一項の種類株主総会に提出するには、監査等委員会の同意を得なければならない。
監査等委員会設置会社限定の話しです。
取締役選任権付株式があり、種類株主総会にて監査等委員である取締役の選任を行おうとする場合、事前に監査等委員会の同意の同意を得る必要があります。
続いて第2項を確認します。
▼会社法347条2項
1項は取締役選任権付株式についての読み替えでしたが、2項は監査役選任権付株式の読み替えになります。
読み替え対象の条文
(1)会社法条329条1項(役員+会計監査人の選任)
(2)会社法条339条1項(役員+会計監査人の解任)
(3)会社法条341条(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
(4)会社法条343条1項と2項(監査役の選任に関する監査役の同意等)
2項の(1)は1項の(1)で、2項の(2)は1項の(3)で、2項の(3)は1項の(4)で解説しています。
それぞれ1項で取締役となっている箇所を監査役と読み替えていただければと思います。
ここでは、会社法343条の読み替えだけ取り上げたいと思います。
会社法343条の1項の元の条文は以下です。
会社法条343条1項(読み替え前)
取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。
株主総会の部分を以下の様に読み替えます。
会社法条343条1項(読み替え後)
取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百二十九条第一項の種類株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。
既に監査役がいる場合、新たな監査役を選任する議案を提出する際に、既存の監査役の同意が必要でした。
監査役選任権付株式でも同じ取扱いになります。
かなり、長い解説になってしまいましたが、出来るかぎり分かりやすく解説したつもりです。
また、気づいた点があったら随時更新していきたいと思います。