まずは第1項を確認します。
▼会社法342条1項
累積投票と言われる選任方法です。累積投票は取締役の選任にのみ用いることができます。監査役や会計参与、会計監査人等の選任には利用できません。
累積投票にて、候補者3名のうち2名を取締役として選任する場合
取締役3名の候補者のなかから、上位2名を取締役として選任する株主総会決議を具体例として考えてみます。
・候補者X
・候補者Y
・候補者Z
株主は以下3名で持株数は、
・株主A 100株
・株主B 30株
・株主C 20株
です。
累積投票の場合、投票数は1株=候補者数となります。
今回の事例では、1株あたり3票になり、
・株主A 100株 → 300票
・株主B 30株 → 90票
・株主C 20株 → 60票
となります。
株主は持っている票を、一人の候補者に集中して投票してもいいですし、分散して投票してもよいです。
会社は、株主のうち1名より、「累積投票にて取締役を選任したい」と申し入れられたら、株主総会にて累積投票形式での選任をしなければなりません。
累積投票は、会社にとって事務作業の負担が増えます。
そのため、定款で別段の定めをすることで、累積投票を排除することも可能にしてくれています。
例えば、トヨタ自動車の定款には、累積投票を排除する旨が定款に定められています。
取締役の選任は、累積投票によらないものとする。
(トヨタ自動車 定款 第30条3項(取締役の選任))
続いて第2項を確認します。
▼会社法342条2項
累積投票形式での取締役選任をしたいとの申し出は、株主総会の5日前までにする必要があります。
ちなみに、持株数や期間などの要件はないので、1株でも持っていれば会社に対して請求することが出来ます。
続いて第3項を確認します。
▼会社法342条3項
308条1項は、1株1議決権の旨を定めていますが、累積投票では1株=候補者数の投票数となります。
1項で詳しく解説していますので、確認してみてください。
続いて第4項を確認します。
▼会社法342条4項
こちらも1項で解説済みです。
続いて第5項を確認します。
▼会社法342条5項
法務省令とは、会社法施行規則97条です。
興味のある方は確認してみてください。
続いて第6項を確認します。
▼会社法342条6項
前条の規定とは、341条のことです。
つまり、累積投票で選任された取締役の解任については、341条の規定は適用されず、309条2項7号により、特別決議にて解任しなければなりません。