まずは第1項を確認します。
▼会社法206条の2の1項
上場企業で時々見られますが、要するに発行予定の株式が目茶苦茶多い場合に発動する条文になります。
以下の会社を例にします。
上場企業にしては、発行済み株式総数が少ないですが、そこはご了承ください。
X社は資金調達が必要になったため、新たに株式を発行することにしたとします。
仮に1,001株を新たに発行した場合はどうなるでしょうか。
既存株主と新規に入ってくる株主の割合を比べると、
議決権の過半数を新規株主に奪われてしまいました。
議決権の過半数を奪われるということは、新規株主のみで普通決議を承認可決することが出来ますし、逆に普通決議を否決することが出来ます。
これってとても影響力のあることです。
このような場合は、199条1項4号の期日(払込期間なら初日)の2週間前までに、既存株主に通知を出さなければなりません。
通知事項は氏名又は名称及び住所の他に会社法施行規則42条の2に規定されている事項です。
1項ただし書きですが、X社の親会社等が新規株主になる場合や株主割当て方式(202条)の場合は、上記通知は不要です。
続いて第2項を確認します。
▼会社法206条の2の2項
1項の通知は株主多数の場合などは、公告方法に従って公告すれば、個別的な通知はする必要がありません。
続いて第3項を確認します。
▼会社法206条の2の3項
1項に該当する場合であって、金融商品取引法上の届け出をしている会社は通知(もちろん公告も)する必要はありません。
法務省令は会社法施行規則42条の3の事なので、余裕があれば確認してみてください。
続いて第4項を確認します。
▼会社法206条の2の4項
1項で、議決権の過半数を奪われる事になる場合、既存株主への通知が必要であることを確認しましたが、その通知に対してレスポンスがあった場合の規定になります。
以下の会社を例にします。
新たに1,001株を発行するにあたり、既存株主が反対の通知を会社にしてきましたが、その反対株主の持ち株数の合計100株以上に達したときは、株主総会での決議が必要になります。
こちらの決議は309条2項に列挙されていないので、普通決議で足りると思いきや、5項に別途規定があるので確認してみてください。。
公開会社は取締役会設置会社であるところ、通常、募集株式の発行は取締役会で決議できる(201条)ことと比較してみてください。
4項にはただし書きがあり、会社の財務状況が著しく悪化している場合で事業継続がピンチの場合は、取締役会の決議のみで募集株式の発行をすることが出来ます。
要は、資金ショート目前で、あの投資家からお金を貰わないと、会社が倒産するなどの場合です。
会社が倒産したら、その会社の株の価値は無くなります。機動的に募集株式の発行をしなければならない場面もあるわけなので、そのような場合は、取締役会のみで募集株式の発行を決めることが出来ます。
続いて第5項を確認します。
▼会社法206条の2の5項
4項の株主総会決議は特別な普通決議で決議します。通常の普通決議は、出席要件と決議要件の両方を排除できますが、206条の2の5項は、定款で別段の定めをした場合であっても、出席要件は1/3まで、決議要件は加重のみ可となっています。
こちらは309条1項に普通決議の決議要件を記載しているので、比較してみてください。