会社法33条(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)を解説します。




会社法33条は定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任について規定している条文です。







1.会社法33条の条文

第33条(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)
発起人は、定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第三十条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。
前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。
裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、成立後の株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。
第二項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。
裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第二項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。
第二項の検査役は、第四項の報告をしたときは、発起人に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。
裁判所は、第四項の報告を受けた場合において、第二十八条各号に掲げる事項(第二項の検査役の調査を経ていないものを除く。)を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない。
発起人は、前項の決定により第二十八条各号に掲げる事項の全部又は一部が変更された場合には、当該決定の確定後一週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。
前項に規定する場合には、発起人は、その全員の同意によって、第七項の決定の確定後一週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する定款の変更をすることができる。
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前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
第二十八条第一号及び第二号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合 同条第一号及び第二号に掲げる事項
現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項に規定する有価証券をいい、同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利を含む。以下同じ。)について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項
現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項(当該証明を受けた現物出資財産等に係るものに限る。)
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次に掲げる者は、前項第三号に規定する証明をすることができない。
発起人
第二十八条第二号の財産の譲渡人
設立時取締役(第三十八条第一項に規定する設立時取締役をいう。)又は設立時監査役(同条第三項第二号に規定する設立時監査役をいう。)
業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
弁護士法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上が第一号から第三号までに掲げる者のいずれかに該当するもの



2.会社法33条1項


まずは第1項を確認します。


▼会社法33条1項

発起人は、定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第三十条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。

会社法28条各号とは、現物出資や財産引受けなどに関する条文になります。

こちらの記載が定款にある場合は、原始定款を公証人の認証を受けたのち(会社法30条1項)、裁判所に対し、検査役の選任の申し立てをする必要があります。

上記は、会社財産に影響を及ぼすおそれが大きいので、問題ないかチェックしてもらうわけです。



3.会社法33条2項


続いて第2項を確認します。


▼会社法33条2項

前項の申立てがあった場合には、裁判所は、これを不適法として却下する場合を除き、検査役を選任しなければならない。

裁判所は、検査役の選任の申し立てがあった場合は、不適法と判断する場合を除き、検査役の選任をしなければなりません。



4.会社法33条3項


続いて第3項を確認します。


▼会社法33条3項

裁判所は、前項の検査役を選任した場合には、成立後の株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができる。

2項で選任された検査役はもちろん無償で働いてもらうわけではありません。その費用については、会社負担となります。



5.会社法33条4項


続いて第4項を確認します。


▼会社法33条4項

第二項の検査役は、必要な調査を行い、当該調査の結果を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を裁判所に提供して報告をしなければならない。

検査役は調査後、裁判所へ調査結果を報告する義務があります。



6.会社法33条5項


続いて第5項を確認します。


▼会社法33条5項

裁判所は、前項の報告について、その内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するため必要があると認めるときは、第二項の検査役に対し、更に前項の報告を求めることができる。

裁判所は検査役の報告が足りない判断した場合は、補足の報告を求めることが出来ます。

私見になりますが、検査役の報告がいまいちでも、再調査の指示までは出来ないかと思います。

条文上も、「報告を求めることができる」となっていますし。



7.会社法33条6項


続いて第6項を確認します。


▼会社法33条6項

第二項の検査役は、第四項の報告をしたときは、発起人に対し、同項の書面の写しを交付し、又は同項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供しなければならない。

現物出資や財産引受けなどが原始定款に入っており、検査役が選任された場合、検査役は発起人に対しても、裁判所にした報告と同じ内容の報告をしなければなりません。



8.会社法33条7項


続いて第7項を確認します。


▼会社法33条7項

裁判所は、第四項の報告を受けた場合において、第二十八条各号に掲げる事項(第二項の検査役の調査を経ていないものを除く。)を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない。

7項は、会社法207条7項にて解説していますので、リンク先を確認してください。



9.会社法33条8項


続いて第8項を確認します。


▼会社法33条8項

発起人は、前項の決定により第二十八条各号に掲げる事項の全部又は一部が変更された場合には、当該決定の確定後一週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。

8項も、会社法207条8項にて解説していますので、リンク先を確認してください。



10.会社法33条9項


続いて第9項を確認します。


▼会社法33条9項

前項に規定する場合には、発起人は、その全員の同意によって、第七項の決定の確定後一週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する定款の変更をすることができる。

裁判所より、現物出資や財産引受けなどについて変更の決定が出たのち、発起人全員の同意で、現物出資や財産引受けなどについての定款記載事項を廃止、つまり削除することができます。



11.会社法33条10項


続いて第10項を確認します。


▼会社法33条10項

10
前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
第二十八条第一号及び第二号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合 同条第一号及び第二号に掲げる事項
現物出資財産等のうち、市場価格のある有価証券(金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項に規定する有価証券をいい、同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利を含む。以下同じ。)について定款に記載され、又は記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合 当該有価証券についての第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項
現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士(公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士をいう。)を含む。以下同じ。)、監査法人、税理士又は税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価。以下この号において同じ。)を受けた場合 第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項(当該証明を受けた現物出資財産等に係るものに限る。)


現物出資財産等について定義されました。

会社法28条1項1号と2号ですが、現物出資+財産引き受けのことです。

会社法28条については、設立費用でも解説しているので、興味ありましたら確認してみてください。

10項も、会社法207条9項にて解説していますので、リンク先を確認してください。



会社法33条10項1号 → 会社法207条9項2号
会社法33条10項2号 → 会社法207条9項3号
会社法33条10項3号 → 会社法207条9項4号



12.会社法33条11項


続いて第11項を確認します。


▼会社法33条11項

11
次に掲げる者は、前項第三号に規定する証明をすることができない。
発起人
第二十八条第二号の財産の譲渡人
設立時取締役(第三十八条第一項に規定する設立時取締役をいう。)又は設立時監査役(同条第三項第二号に規定する設立時監査役をいう。)
業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者
弁護士法人、監査法人又は税理士法人であって、その社員の半数以上が第一号から第三号までに掲げる者のいずれかに該当するもの


現物出資財産の鑑定は、利害がある人や業務停止中の者等は、証明者にはなれません(手心を加えてしまう恐れがあるため)。



13.司法書士試験の過去問に挑戦


平成1年29問目(会社法)

問い 正誤
発起設立の場合, 現物出資の給付の有無について、検査役の調査を受けなければならない。
クリック
裁判所は,検査役の報告に基づき,現物出資に関する定款の定めを不当と認めたときは,それに変更を加える決定をしなければならない。
クリック

平成30年27問目(会社法)

株式会社の設立に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。なお,問題文に明記されている場合を除き,定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして,解答すること

問い 正誤
発起設立の場合において,現物出資の目的財産である甲土地について定款に記載された価額が2000万円であって,財産引受けの目的財産である乙建物について定款に記載された価額が400万円であるときは,甲土地について定款に記載された価額が相当であることについて,監査法人の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けたときであっても,発起人は,乙建物に関する定款の記載事項を調査させるため,裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。
クリック

平成31年27問目(会社法)

株式会社の設立に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお,問題を解くにあたっては、各肢に明記されている場合を除き,定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして,解答すること

問い 正誤
裁判所は,金銭以外の財産の出資に関する事項について裁判所が選任した検査役の報告を受けた場合において,当該検査役の調査を経た当該財産を出資する者に対して割り当てる設立時発行株式の数を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない。
クリック



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