まずは第1項を確認します。
▼会社法189条1項
188条1項で解説しましたが、単元株式数未満の株については、議決権を行使できません。
例えば、単元株式数が100株の会社であれば、101株を保有している株主の議決権数は1個です。
続いて第2項を確認します。
▼会社法189条2項
2項は定款で定めることによって、単元未満株式についての一定の権利を、会社が奪うことが出来る規定です。
ややこしい記載ぶりですが、定款で別段の定めをしたとしても、会社が奪えない権利が1~6号に記載されています。
171条1項1号とは、全部取得条項付種類株式の取得対価の交付について規定している条文です。
つまり、単元未満株式については、全部取得条項付種類株式の取得の対価を交付しない、という定款の定めは出来ません。
107条1項3号と108条1項6号に規定のある、取得条項付株式の取得対価についても、取得の対価を交付しない、という定款の定めは出来ません。
185条で株式無償割当てを解説しています。
株式無償割当ては、保有株式数に応じて平等に株式を割当てる手続きですが、単元未満株式については、株式無償割当てはしない、という定款の定めは出来ません。
192条1項とは、単元未満株式の買取りの請求について規定している条文です。
単元株式数が100株の場合、99株が単元未満株式となりますが、その単元未満株式を会社に買い取って貰える定めが192条です。
この権利は、定款でも排除することは出来ません。
残余財産分配請求権については、108条で解説しています。
この権利も、定款でも排除することは出来ません。
法務省令とは会社法施行規則35条のことですが、一部を紹介すると、株主名簿の閲覧請求権(規則35条1項3号)であったり、定款の閲覧請求権(規則35条1項1号)などが該当します。
以下に、住友林業株式会社(東証一部上場)の定款記載例を掲載します。
第9条(単元未満株式についての権利)
当会社の株主は、その有する単元未満株式について、次に掲げる権利以外の権利を行使することができない。
1.法令により定款をもってしても制限することができない権利
2.株主割当てによる募集株式及び募集新株予約権の割当てを受ける権利
3.次条に定める請求をする権利
第10条(単元未満株式の買増し)
当会社の単元未満株式を有する株主は、その単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を自己に売り渡す旨を当会社に請求することができる。
続いて第3項を確認します。
▼会社法189条3項
3項は株券発行会社限定の規定ですが、単元未満株式に関する株券も原則発行する必要があるところ、定款で別段の定めをすることにより、株券の発行義務を回避することが出来ます。