会社法177条(売買価格の決定)を解説します。




会社法177条は売買価格の決定について規定している条文です。







1.会社法177条の条文

第177条(売買価格の決定)
前条第一項の規定による請求があった場合には、第百七十五条第一項第一号の株式の売買価格は、株式会社と同項第二号の者との協議によって定める。
株式会社又は第百七十五条第一項第二号の者は、前条第一項の規定による請求があった日から二十日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができる。
裁判所は、前項の決定をするには、前条第一項の規定による請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。
第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第百七十五条第一項第一号の株式の売買価格とする。
第二項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第一項の協議が調った場合を除く。)は、前条第一項の規定による請求は、その効力を失う。



2.会社法177条1項


まずは第1項を確認します。


▼会社法177条1項

前条第一項の規定による請求があった場合には、第百七十五条第一項第一号の株式の売買価格は、株式会社と同項第二号の者との協議によって定める。

177条は、株主に相続その他の一般承継があった場合に、会社がその株式を買い取れる規定が定款にあり(174条)、実際に会社が売り渡し請求を行った場面(176条)の規定です。

株の売買価格については、まず会社と株式を承継した者との協議が求められています。



3.会社法177条2項


続いて第2項を確認します。


▼会社法177条2項

株式会社又は第百七十五条第一項第二号の者は、前条第一項の規定による請求があった日から二十日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができる。

こちらは、会社と株式を承継した者との間で、協議が整わなかった場合の規定です。

会社による売渡し請求があった日から20日以内であれば、裁判所に売買価格の決定を申し立てることが出来ます。



4.会社法177条3項


続いて第3項を確認します。


▼会社法177条3項

裁判所は、前項の決定をするには、前条第一項の規定による請求の時における株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない。

144条3項の株主Aから株主Bへ株式を譲渡したい請求があったときに、譲渡を認めないなら会社が買い取ってね、という請求があった場合にも同様の規定があります。

ただ、本条の場合は、上記のケースと異なり、相続その他一般承継を原因として会社が一方的に株を奪う制度であるため、若干プレミアムが上乗せされる可能性はあるようです。

こちらの根拠は会社法コンメンタール4です。


144条の場合と異なり、会社からの一方的な売渡しの請求によって、株主の地位を奪う制度であることから、当該売渡請求によって支配権の移動が伴う場合には、いわゆる支配権プレミアムに相当する部分についても積極的に判断の要素に取り入れるべきであろう。

(山下友信『会社法コンメンタール4』 商事法務.)


5.会社法177条4項


続いて第4項を確認します。


▼会社法177条4項

第一項の規定にかかわらず、第二項の期間内に同項の申立てがあったときは、当該申立てにより裁判所が定めた額をもって第百七十五条第一項第一号の株式の売買価格とする。

裁判所に申し立てた後、当事者で協議していたとしても、裁判所が決定した価格が株式の売買価格になります。



6.会社法177条5項


続いて第5項を確認します。


▼会社法177条5項

第二項の期間内に同項の申立てがないとき(当該期間内に第一項の協議が調った場合を除く。)は、前条第一項の規定による請求は、その効力を失う。

会社による売渡し請求があった日から20日以内に、裁判所への売買価格の申し立てがないとき(第2項)は、会社がした売渡の請求(176条1項)は効力を失います。




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