まずは第1項を確認します。
▼会社法171条1項
全部取得条項付種類株式が種類株式の内容として設定されている場合、株主総会の特別決議(309条2項3号)を経て、その種類の株式の全てを会社が回収することが出来ます。
回収された全部取得条項付種類株式は自己株式になります(173条1項)。
また、全取得条項付種類株式の取得の対価は、株式が回収される決議の際に決めなければなりません。
あらかじめ取得の対価を決めることも出来ますが、対価の後決めも可能なあたりが取得条項付株式と違いますね。
また、全部取得条項付種類株式の対価ですが、1項1号で「金銭等を交付するときは」とあるので、無償での回収もあり得ます。
無償回収の根拠は、江頭先生の書籍に記載があります。
(全部取得条項付種類株式の)取得対価は無償もあり得る。
(江頭 株式会社法 有斐閣)
1項2号の取得対価の割当てに関する事項とは、具体的には、全部取得条項付種類株式のページの<交付の割合は普通株式1株に対し、A種優先株式0.00125株とします。>が該当します。
1項3号の取得日は株主総会決議日と同日である必要はなく、任意の日付に全部取得条項付種類株式を取得することも可能です。
続いて第2項を確認します。
▼会社法171条2項
特定の株主のみ優遇して対価を交付することを禁止しています。
つまり、対価を交付する場合は、持株比率に応じて按分で対価の割当てする必要があります。
対価については、全員同じ内容でないといけません。Aさんは社債で、Bさんはキャッシュということは出来ないということですね。
根拠は、戸嶋先生の書籍です。
全部取得条項付種類株式の数に応じて按分で割り当てることを要し、株主ごとに異なる種類の対価を交付することは出来ない。
(戸嶋浩二『株式・種類株式<第2版> (【新・会社法実務問題シリーズ】』)
続いて第3項を確認します。
▼会社法171条3項
全部取得条項付種類株式の具体的な使用例に記載していますが、ある会社を完全子会社したい場合に利用されることが多いため、その辺りの説明がされることが多いですが、実際の利用目的に則した説明が求められます。