まずは第1項を確認します。
▼会社法423条1項
まず、大原則として取締役は会社法のみならずあらゆる法令・定款・株主総会での決議事項を遵守しなければなりません(355条)。これらに違反すること自体が任務を怠ったことになります。
これを踏まえたうえで1項の解説に入りますが、役員等は会社に対して、任務を怠ったときに生じた損害を負う責任(任務懈怠責任)を負っています。
取締役は株主から出資してもらったお金を原資に会社の運営を行っており、株主から経営を任されているので、任務を怠って損害が発生したならその責任を取るべきです。
逆に、取締役が任務を怠っておらず、会社に損害が発生したのなら、取締役は責任を負いません。自分の任務を全うした上での結果に対して、責任を追及するのは酷だし、それが可能になったら誰も取締役になりたがらないでしょう。
取締役が自分の任務を全うした上で会社に大赤字が発生したのなら、それはその取締役を選任した株主の責任です。
続いて、2項です。
▼会社法423条2項
356条1項一号「取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。」は競業取引といいます。
取締役が競業取引をする際には、株主総会で承認を受けなければなりません。取締役会設置会社であるなら、取締役会での承認が必要です。
これらの承認を得ずに、競業取引を行った場合、取締役・第三者が得た利益の額が損害額として推定されます。
承認を得ずにやったのだから、実際に発生した損害額でなく、利益の額がそのまま損害額として推定されてしまうあたりが、重い規定です。
続いて、3項です。
▼会社法423条3項
356条1項二号は「取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。」
356条1項三号は「株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。」
これらは利益相反取引と言われます。
取締役が利益相反取引を行う場合には、株主総会の承認(取締役会なら取締役会での承認)が必要です(356条と365条)。
承認を受けていたとしても、利益相反取引を行ったことで会社に損害が発生したのなら、任務を怠ったものと推定されます。
任務を怠ったことが推定されると、それによって生じた損害を賠償する責任が生じます(423条1項)。
まとめとしては、
任務を怠ったと推定される取締役は、実際に利益相反取引を行った取締役、利益相反取引に賛成した取締役等です。
続いて、4項です。
▼会社法423条4項/
監査等委員会の承認を受けている場合なら、前項の規定は適用されません。理由としては、ちゃんと監査が効いている会社で承認を受けていて、それでも損害が発生したならしょうがないから、と考えられます。
平成14年30問目(会社法)
株式会社A社の代表取締役Bに関する次の記述のうち,正しいものはどれか(取締役会設置会社以外の株式会社は考慮しない)
肢 | 問い | 正誤 |
ア | Bが、A社と同種の事業を営む他の株式会社の取締役に就任するには,A社の取締役会において重要な事実を開示し,その承認を得なければならない。 |
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イ | Bが、A社を代表して,A社の他の取締役Cの債務を保証するには,A社の取締役会の承認を得なければならない。 |
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ウ | Bは自らの計算においてA社の事業の部類に属する取引をし,これによりA社に損害を与えたときは,その取引につきあらかじめA社の取締役会の承認を得ていたとしても,A社の損害を賠償する責任を負う。 |
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エ | Bは、A社から財産を譲り受け,これによりA社に損害を与えたときは、その譲渡につきあらかじめA社の取締役会の承認を得ていたとしても,A社の損害を賠償する責任を負う。 |
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