会社法336条(監査役の任期)を解説します。




会社法336条は監査役の任期について規定している条文です。







1.会社法336条の条文

第336条(監査役の任期)
監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
第一項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。
前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更
その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更



2.会社法336条1項


まずは第1項を確認します。


▼会社法336条1項

監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

監査役の任期の規定ですが、原則4年となります。取締役の任期(332条1項)のように定款・株主総会の決議でも任期の短縮をすることは出来ません。

この規定には、監査役の地位の独立性を高め、しっかり監査してもらいたいという趣旨があるようです。



3.会社法336条2項


続いて第2項を確認します。


▼会社法336条2項

前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

非公開会社であれば、定款で別段の定めをすることで、監査役の任期を10年まで伸長することが可能です。



4.会社法336条3項


続いて第3項を確認します。


▼会社法336条3項

第一項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。

補欠監査役についても、前任者の任期までとすることが可能です。



5.会社法336条4項


続いて第4項を確認します。


▼会社法336条4項

前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更
その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更

監査役設置会社に移行する場合、定款を変更する必要がありますが、廃止する場合も、同様に定款の変更が必要になります。

そして、監査役設置会社をやめる場合、在任中の監査役の任期が切れ、任期満了退任になります(1号)。

2号の委員会系の会社に移行する場合、それぞれ監査等委員と監査委員会があるので、別途監査役を選任することは出来ませんので、在任中の監査役は退任となります。

3号は、計算書類等についてのみ監査する必要があったところ、監査範囲の拡大になるので、改めて選任しなおす趣旨です。

4号は、非公開会社が公開会社に移行する場合です。

公開会社になると、監査のレベルも上げる必要がでてきますので、一旦退任し、改めて選任しなおす必要があります。



6.司法書士試験の過去問に挑戦

平成24年31問目(会社法)

次の対話は,補欠の監査役に関する教授と学生との対話である。

教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,誤っているものはどれか。

なお,問題文に明記されている場合を除き,定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして,解答すること。

問い 正誤
教授:任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとする旨の定款の定めがない場合であっても,この補欠の監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時まで短縮することができますか。
学生:そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがない場合には,株主総会の決議によっても,その補欠の監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時まで短縮することはできません。
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教授:それでは,そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがある場合には,この補欠の監査役の任期はどうなりますか。
学生:そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがある場合において、選任の際に,株主総会の決議によって,その監査役が補欠であってその任期を退任した監査役の任期の満了する時までとする旨が定められたときは,その補欠の監査役の任期は,退任した監査役の任期の満了する時までとなります。
クリック



教授:次に,株主総会の決議によって,会社法又は定款で定めた監査役の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の監査役を選任することができますが,例えば、5名以内の監査役を置くという定款の定めがある監査役会設置会社であるA株式会社(以下「A社」という。)の5名の監査役のうち,3名が社外監査役である場合において,社外監査役ではなく,かつ,常勤の監査役でもない監査役1名が死亡したときは,補欠の監査役は,監査役に就任することができますか。
学生:いいえ。会社法で定めた監査役の員数及び定款で定めた監査役の員数をいずれも満たしているので,補欠の監査役は,監査役に就任することができません。
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教授:それでは,A社の5名の監査役のうち,3名が社外監査役である場合において,常勤の監査役ではない社外監査役1名が死亡したときは,補欠の社外監査役は,社外監査役に就任することができますか。
学生:はい。会社法で定めた社外監査役の員数を満たしていないので,補欠の社外監査役は,社外監査役に就任することができます。
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教授:最後に,A社の5名の監査役のうち,1名だけが社外監査役ではなく。常動の監査役である場合において、その常勤の監査役が死亡したとさは、補欠の監査役は、監査役に就任することができますか。
学生:はい。会社法上,監査役会は,監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないので,補欠の監査役は監査役に就任することができます。
クリック




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