会社法239条(募集事項の決定の委任)を解説します。




会社法239条は募集事項の決定の委任について規定している条文です。







1.会社法239条の条文

第239条(募集事項の決定の委任)
前条第二項及び第四項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集新株予約権の内容及び数の上限
前号の募集新株予約権につき金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額の下限
次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
前項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
前項第三号に規定する場合において、同号の払込金額の下限が当該者に特に有利な金額であるとき。
第一項の決議は、割当日が当該決議の日から一年以内の日である前条第一項の募集についてのみその効力を有する。
種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定の委任は、前条第四項の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。



2.会社法239条1項


まずは第1項を確認します。


▼会社法239条1項

前条第二項及び第四項の規定にかかわらず、株主総会においては、その決議によって、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に委任することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
その委任に基づいて募集事項の決定をすることができる募集新株予約権の内容及び数の上限
前号の募集新株予約権につき金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額の下限

株式の発行にも取締役への委任の規定(200条)がありますが、新株予約権についても同様の考え方です。

前条(238条)では、新株予約権の募集事項について解説しました。

新株予約権の発行は、公開会社を除いては、株主総会で決議する必要があります。

239条は、一定事項を株主総会で決めれば、具体的な発行タイミングは取締役(取締役会)に任せることが出来る、という条文です。

では、一定事項とは何か。短くまとめると以下の項目です。



・新株予約権の内容および数(1号)

・無償発行か(2号)

・有償発行なら、払込金額の下限(3号)


新株予約権の内容は、236条1項に記載していますので、確認してみてください。

新株予約権の内容の一部を紹介すると、新株予約権を行使した際に交付される株式の種類と株数、行使に際して出資される財産の額などが新株予約権の内容になります。

無償発行か有償発行かどうかも決める必要があります。有償発行の場合は、新株予約権発行時に払い込みがあるので、その払込金額の下限が必要です。

つまり、既存株主としては、上記の項目(枠)さえ定めておけば、自らの株式の希薄化を把握できますし、新株予約権の内容も把握できるので問題ないというわけです。



3.会社法239条2項


続いて第2項を確認します。


▼会社法239条2項

次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
前項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
前項第三号に規定する場合において、同号の払込金額の下限が当該者に特に有利な金額であるとき。

238条3項でも解説しましたが、新株予約権発行時に、無償と有償を決めますが、無償であることが特に有利な場合、また有償だがその金額が特に有利な場合は、取締役は株主総会で説明義務を負います



4.会社法239条3項


続いて第3項を確認します。


▼会社法239条3項

第一項の決議は、割当日が当該決議の日から一年以内の日である前条第一項の募集についてのみその効力を有する。

例えば、2021年1月10日の株主総会にて、新株予約権の発行について取締役への委任があった場合、2022年1月10日を割当日とする新株予約権までが有効な委任になります。



5.会社法239条4項


続いて第4項を確認します。


▼会社法239条4項

種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定の委任は、前条第四項の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

238条4項と同じ趣旨ですので、そちらを確認してみてください。




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