2.会社法236条1項
まずは第1項を確認します。
▼会社法236条1項
1
株式会社が新株予約権を発行するときは、次に掲げる事項を当該新株予約権の内容としなければならない。
一
当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
二
当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
三
金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四
当該新株予約権を行使することができる期間
五
当該新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項
六
譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨
七
当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項
イ
一定の事由が生じた日に当該株式会社がその新株予約権を取得する旨及びその事由
ロ
当該株式会社が別に定める日が到来することをもってイの事由とするときは、その旨
ハ
イの事由が生じた日にイの新株予約権の一部を取得することとするときは、その旨及び取得する新株予約権の一部の決定の方法
ニ
イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式を交付するときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその算定方法
ホ
イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)を交付するときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ヘ
イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の他の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)を交付するときは、当該他の新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ト
イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の新株予約権付社債を交付するときは、当該新株予約権付社債についてのホに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのヘに規定する事項
チ
イの新株予約権を取得するのと引換えに当該新株予約権の新株予約権者に対して当該株式会社の株式等以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
八
当該株式会社が次のイからホまでに掲げる行為をする場合において、当該新株予約権の新株予約権者に当該イからホまでに定める株式会社の新株予約権を交付することとするときは、その旨及びその条件
イ
合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 合併後存続する株式会社又は合併により設立する株式会社
ロ
吸収分割 吸収分割をする株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を承継する株式会社
ハ
新設分割 新設分割により設立する株式会社
ニ
株式交換 株式交換をする株式会社の発行済株式の全部を取得する株式会社
ホ
株式移転 株式移転により設立する株式会社
九
新株予約権を行使した新株予約権者に交付する株式の数に一株に満たない端数がある場合において、これを切り捨てるものとするときは、その旨
十
当該新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)に係る新株予約権証券を発行することとするときは、その旨
十一
前号に規定する場合において、新株予約権者が第二百九十条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨
新株予約権に関する条文です。
新株予約権を発行する際に、新株予約権の内容として決めなければならない事項があります。
必ず決めなければならないのは、1、2、4、5号です。
青いマーカーの3、6~11号については、定めることができる任意的な項目になります。
以下、個別的に確認します。
新株予約権の内容として必須の項目
1号 当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
例えば、新株予約権1個につき、普通株式1株と定めます。種類株式発行会社であれば、新株予約権1個につき、A種類株式1株とすることも可能です。
確定した株式の数でなく、株式の数の算定方法を決めておくことも可能です。
転換社債型新株予約権やJ-KISS等の有償新株予約権の場合は、こちらの算定方法を決めておくことが多いです。
2号 当該新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
実際に新株予約権を行使して、株式を手に入れる場合、必ず出資する必要があります。
この出資額は新株予約権の内容の一部になります。
例えば、1株につき100円と定めます。
4号 当該新株予約権を行使することができる期間
新株予約権の行使が出来る期間です。
具体的に、2021年1月1から2028年12月31日まで、と定めることも出来ますし、いつでも行使することができる、と定めることも可能です。
5号 当該新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2号で新株予約権の行使価額を決めましたが、行使時に100円をいくら資本金にし、いくらを資本準備金にするのか決めておく必要があります。
新株予約権の内容として定めることが出来る項目
3号 金銭以外の財産を当該新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
新株予約権の行使の際に、現金以外の財産を出資することも可能です。
実務的には、転換社債型新株予約権付社債の発行時に3号が出てくることが多いのではないでしょうか。
転換社債型新株予約権付社債とは、新株予約権を行使する際に、あらかじめ発行済みの社債を現物出資することで、社債と株式を交換するスキームです。
6号 譲渡による当該新株予約権の取得について当該株式会社の承認を要することとするときは、その旨
新株予約権も株式のように、他の者に譲渡することが可能です。
ただ、実務的には、新株予約権に譲渡制限を付けている場合がほとんどではないでしょうか。
新株予約権を保有している者は、将来的には株主になり得る者です。新株予約権を自由に譲渡されると、良からぬ第三者が株主になる可能性もあり、そうなると会社も困るからです。
ということなので、6号は任意的な項目ですが、ほぼ全ての新株予約権に入っていると思われます。
7号 当該新株予約権について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、次に掲げる事項
7号がある新株予約権は取得条項付新株予約権と呼ばれます。
取得条項付株式(107条2項)と同じ考えかたです。
会社側から強制的に新株予約権を回収できる規定になります。
イ・ロ・ハについては取得できる事由の旨、ニ・ホ・ヘ・ト・チについては取得の対価の旨が定められています。
取得の対価は、株式(ニ)、社債(ホ)、他の新株予約権(ヘ)、新株予約権付社債(ト)、株式等以外の財産(チ)を定めることが可能です。
取得の対価を定めないことも可能です。
実務的には、会社が買収された時に新株予約権を回収できるようにしている場合や、役員や従業員が会社を退職した時に新株予約権を回収できるように取得事由を付けている場合が多いです。
8号 当該株式会社が次のイからホまでに掲げる行為をする場合において、当該新株予約権の新株予約権者に当該イからホまでに定める株式会社の新株予約権を交付することとするときは、その旨及びその条件
合併等の組織再編に伴い、新株予約権が消滅することがあります。
その際に、買収する側の新株予約権を交付することが可能と定めておくことも可能です。
9号 新株予約権を行使した新株予約権者に交付する株式の数に一株に満たない端数がある場合において、これを切り捨てるものとするときは、その旨
例えば、新株予約権1個を行使し、普通株式1.1株が交付された場合などは、端数の0.1株分を切り捨てると定めることが可能です。
1株未満の株式の取り扱いは、かなり面倒(234条)なので、こちらの項目も実務的にはだいたい入っています。
10号 当該新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)に係る新株予約権証券を発行することとするときは、その旨
新株予約権に関する証券を発行する場合は、その旨を定めることが可能です。
11号 前号に規定する場合において、新株予約権者が第二百九十条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨
新株予約権証券は原則、記名式を無記名式に、また無記名式を記名式に変更することが出来ます(290条)。
上記請求を不可とすることも可能ですが、その場合は、その旨を指定しておきます。
3.会社法236条2項
続いて第2項を確認します。
▼会社法236条2項
2
新株予約権付社債に付された新株予約権の数は、当該新株予約権付社債についての社債の金額ごとに、均等に定めなければならない。
社債の券面額と付された新株予約権は比例的にしておかないとなりません。
例えば、1万円の新株予約権付社債があった場合、新株予約権の行使で普通株式1株の交付が受けられるとした時に、10万円の新株予約権付社債であれば、普通株式10株としなければなりません。
こちらは会社法コンメンタール6を参考にしています。
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