会社法203条(募集株式の申込み)を解説します。




会社法203条は募集株式の申込みについて規定している条文です。





1.会社法203条の条文

第203条(募集株式の申込み)
株式会社は、第百九十九条第一項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
株式会社の商号
募集事項
金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
第百九十九条第一項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。
申込みをする者の氏名又は名称及び住所
引き受けようとする募集株式の数
前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。
第一項の規定は、株式会社が同項各号に掲げる事項を記載した金融商品取引法第二条第十項に規定する目論見書を第一項の申込みをしようとする者に対して交付している場合その他募集株式の引受けの申込みをしようとする者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。
株式会社は、第一項各号に掲げる事項について変更があったときは、直ちに、その旨及び当該変更があった事項を第二項の申込みをした者(以下この款において「申込者」という。)に通知しなければならない。
株式会社が申込者に対してする通知又は催告は、第二項第一号の住所(当該申込者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

2.会社法203条1項


まずは第1項を確認します。


▼会社法203条1項

株式会社は、第百九十九条第一項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
株式会社の商号
募集事項
金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

コラム

ここで一度、実務目線で募集株式の発行の全体像を確認したいと思います。

というのも、私が初学者の頃、募集株式の引受けの申込みをしようとする者っていきなり出てきたけど一体なんなんだ?という疑問があったので、解説したいと思います。

取締役会設置会社でない会社を例にします。

取締役たちが事業拡大のため、株式による資金調達を考えたとします。

その事業拡大のために一体いくら必要で、何株を発行するかといった事を取締役たちで議論するわけです。

仮にここでは3000万円の資金が必要であったとしましょう。

次に出資者を探しますが、大きめの金額なので、出資者はエンジェル投資家ではなく、ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)がメインになります。

あるVCにピッチ(事業内容の説明)をしたところ、「イイネ!」ということになり、無事に出資してもらえる運びになりました。

更に、ここから投資契約だなんだと契約を巻いていくわけですが、上記のように実務では出資者を先に探し、投資内容が確定した後に株主総会を開催し、募集事項の決定と割当ての決議を取ります。

募集事項の決定と割当ては同時に決議を取ることがほとんどです。

条文上では199条204条で募集事項の決定と割当ては別々の項目になっていますが、上記のような事情のもと募集株式の発行をする事がほとんどですので、まとめて決議した方が無駄がありません。

ちなみに、203条1項の募集株式の引受けの申込みをしようとする者はここでいうVCに当たります。

このように、実務上の流れを意識して条文を読んでいくと、どの場面のことなのか理解出来ると思いますので、是非確認してみてください。




募集株式の引受けの申込みをしようとする者に、発行する株式の内容を知らせる必要があります。

知らせる内容としては、1号から4号に関する内容ですが、法務省令で定める事項とは会社法施行規則41条になります。



3.会社法203条2項


続いて第2項を確認します。


▼会社法203条2項

第百九十九条第一項の募集に応じて募集株式の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を株式会社に交付しなければならない。
申込みをする者の氏名又は名称及び住所
引き受けようとする募集株式の数

募集株式の発行に応じる株主は、自己に関する情報(氏名・住所)とともに何株引き受けたいのか会社に書面で知らせる必要があります。



4.会社法203条3項


続いて第3項を確認します。


▼会社法203条3項

前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。

募集株式の引受けの申込みをしようとする者は引き受ける株の数を会社に知らせる必要がありますが、紙の書面以外にも会社の承諾を得れば、電磁的方法による方法での申込も可能です。



5.会社法203条4項


続いて第4項を確認します。


▼会社法203条4項

第一項の規定は、株式会社が同項各号に掲げる事項を記載した金融商品取引法第二条第十項に規定する目論見書を第一項の申込みをしようとする者に対して交付している場合その他募集株式の引受けの申込みをしようとする者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。

募集株式の引受けの申込みをしようとする者にする通知は、金融商品取引法上の目論見書を交付している場合等に該当する場合は不要です。



6.会社法203条5項


続いて第5項を確認します。


▼会社法203条5項

株式会社は、第一項各号に掲げる事項について変更があったときは、直ちに、その旨及び当該変更があった事項を第二項の申込みをした者(以下この款において「申込者」という。)に通知しなければならない。

203条1項に掲げる事項に変更があった場合、つまり会社の商号を変更した場合や振込先の口座情報を変更する場合などは、実際に申込があった者に対して、直ちに通知しなければなりません。



7.会社法203条6項


続いて第6項を確認します。


▼会社法203条6項

株式会社が申込者に対してする通知又は催告は、第二項第一号の住所(当該申込者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。

会社から申込者への通知・催告は、203条2項1号の住所に宛ててすれば足ります。



8.会社法203条7項


続いて第7項を確認します。


▼会社法203条7項

前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

会社からの通知・催告は到達が擬制されることを規定した条文です。




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