まずは第1項を確認します。
▼会社法203条1項
コラム
ここで一度、実務目線で募集株式の発行の全体像を確認したいと思います。
というのも、私が初学者の頃、募集株式の引受けの申込みをしようとする者っていきなり出てきたけど一体なんなんだ?という疑問があったので、解説したいと思います。
取締役会設置会社でない会社を例にします。
取締役たちが事業拡大のため、株式による資金調達を考えたとします。
その事業拡大のために一体いくら必要で、何株を発行するかといった事を取締役たちで議論するわけです。
仮にここでは3000万円の資金が必要であったとしましょう。
次に出資者を探しますが、大きめの金額なので、出資者はエンジェル投資家ではなく、ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)がメインになります。
あるVCにピッチ(事業内容の説明)をしたところ、「イイネ!」ということになり、無事に出資してもらえる運びになりました。
更に、ここから投資契約だなんだと契約を巻いていくわけですが、上記のように実務では出資者を先に探し、投資内容が確定した後に株主総会を開催し、募集事項の決定と割当ての決議を取ります。
募集事項の決定と割当ては同時に決議を取ることがほとんどです。
条文上では199条と204条で募集事項の決定と割当ては別々の項目になっていますが、上記のような事情のもと募集株式の発行をする事がほとんどですので、まとめて決議した方が無駄がありません。
ちなみに、203条1項の募集株式の引受けの申込みをしようとする者はここでいうVCに当たります。
このように、実務上の流れを意識して条文を読んでいくと、どの場面のことなのか理解出来ると思いますので、是非確認してみてください。
募集株式の引受けの申込みをしようとする者に、発行する株式の内容を知らせる必要があります。
知らせる内容としては、1号から4号に関する内容ですが、法務省令で定める事項とは会社法施行規則41条になります。
続いて第2項を確認します。
▼会社法203条2項
募集株式の発行に応じる株主は、自己に関する情報(氏名・住所)とともに何株引き受けたいのか会社に書面で知らせる必要があります。
続いて第3項を確認します。
▼会社法203条3項
募集株式の引受けの申込みをしようとする者は引き受ける株の数を会社に知らせる必要がありますが、紙の書面以外にも会社の承諾を得れば、電磁的方法による方法での申込も可能です。
続いて第4項を確認します。
▼会社法203条4項
募集株式の引受けの申込みをしようとする者にする通知は、金融商品取引法上の目論見書を交付している場合等に該当する場合は不要です。
続いて第5項を確認します。
▼会社法203条5項
203条1項に掲げる事項に変更があった場合、つまり会社の商号を変更した場合や振込先の口座情報を変更する場合などは、実際に申込があった者に対して、直ちに通知しなければなりません。
続いて第6項を確認します。
▼会社法203条6項
会社から申込者への通知・催告は、203条2項1号の住所に宛ててすれば足ります。
続いて第7項を確認します。
▼会社法203条7項
会社からの通知・催告は到達が擬制されることを規定した条文です。