まずは第1項を確認します。
▼会社法167条1項
166条1項により、株主より取得請求権が行使された日に、会社はその株式を取得します。
続いて第2項を確認します。
▼会社法167条2項
取得請求権の行使をした株主は、その請求の日(行使をした日)にその対価を得ることになります。
2項で気になるのは、166条1項で定められた取得の対価の内、107条2項2号ホが入っていないところです。
107条2項2号の社債(ロ)、新株予約権(ハ)、新株予約権付社債(ニ)は167条2項1~3号にありますが、キャッシュ等(ホ)が入っていません。
これについては、キャッシュを交付する際に、会社の口座から出金するという会社内部の手続きもありますし、取得請求権の行使と同時に株主に入金、というのは実務上難しいためです。
代わりに、株主は会社に対して金銭支払請求権という民法上の債権を取得することになります(会社法コンメンタール4より)。
金銭の場合には、取得と引換えに株主には金銭支払請求権という債権を取得することになる。
(山下友信 『会社法コンメンタール4』 商事法務.)
条文もよく考えられていますし、こういったところが会社法の面白い部分と個人的に感じていますが、いかがでしょうか。
4号ですが、例えば普通株式とA種優先株式が発行されている種類株式発行会社をイメージしてください。
A種優先株式に取得の対価として普通株式が交付される場合、取得請求権を行使した日に普通株式を取得することになります。
続いて第3項を確認します。
▼会社法167条3項
前項4号とは種類株式発行会社で、その他の株式を交付する場合です。
以下の会社を例にします。
仮にA種優先株式1株あたりに対し普通株式が1.1株の割合で交付される場合はどうでしょうか。
1株の取得請求権を行使した株主は普通株式を1.1株交付されることになりますが、本項の規定により0.1株は切り捨てられます。
この0.1株はどうなるのかというと、原則現金に換算され株主に交付されることになります。
ただし、定款で別段の定めをすることで、現金交付も不要にできます。
具体例として、シャープのA種優先株式の発行要項を確認します。
A種種類株式の取得と引換えに交付する普通株式の数
A種種類株式の取得と引換えに交付する普通株式の数は、普通株式対価取得請求に係るA種種類株式の数に、A種残余財産分配額を乗じて得られる額を、第3号乃至第6号で定める取得価額で除して得られる数とする。なお、本号においては、A種累積未払配当金相当額の計算及び日割未払優先配当金額の計算における「残余財産の分配が行われる日」及び「分配日」をそれぞれ「普通株式対価取得請求の効力が生じた日」と読み替えて、A種累積未払配当金相当額及び日割未払優先配当金額を計算する。また、普通株式対価取得請求に係るA種種類株式の取得と引換えに交付する普通株式の合計数に1株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとし、この場合においては、会社法第167条第3項に定める金銭の交付は行わない。
現金の交付は計算も煩雑ですし、仮に多数の株主に端数分の現金交付が必要になるとコストがかかりますので、実務上は別段の定めを設計することが多いです。
続いて第4項を確認します。
▼会社法167条4項
取得請求権付株式の取得の対価が社債・新株予約権・新株予約権付社債で、端数が生じる場合、その端数については本項が適用されます。
法務省令とは会社法施行規則31~33条ですが、長いので割愛します。興味のある方は確認してみてください。