まずは第1項を確認します。
▼会社法160条1項
160条は特定の株主からの取得について規定している条文です。
156条は全株主からの取得を想定している条文なので、160条と対比してみてください。
156条の株主総会の決議の際に、全株主に通知を送るのではなく、特定の株主に対してのみ通知を行うことを決定することが出来ます。
ちなみに、特定の株主から株式を取得する場合、株主総会決議は特別決議になりますので注意してください(会社法309条2項2号)。
コラム
160条は特定の株主からピンポイントで株を買い取る場合の条文です。
条文上からは直接見えない部分なので、実務的な流れを書きます。
通常、株主Aさんからのみピンポイントで株式を買い取る場合、事前に会社と株主Aの間で交渉が発生します。
交渉が整ったら、買取の手続きに入ります。
株式買取の理由は様々です。
主なところでは、取締役に生株を渡していたが、会社を去ることになったので、株を会社に戻すためだったり、ベンチャーキャピタルがファンド満期を迎えキャッシュを用意する必要があったりが多いのではないでしょうか。
続いて第2項を確認します。
▼会社法160条2項
特定の株主から株式を取得する場合、その他の既存株主に160条3項による通知をしなければなりません。
法務省令とは会社法施行規則28条のことです。
一部のみ解説しますと、原則的には156条による株主総会決議の2週間前までとなっていますが、場合分けされていますので、興味のある方は確認してみてください。
続いて第3項を確認します。
▼会社法160条3項
2項で、特定の株主から株式を取得する場合、その他の既存株主にも通知が来る旨を解説しましたが、なんとその他の既存も自分の株を買い取って貰えるチャンスがあります。
このあたりは株主平等の原則が効いているためと思われます。
続いて第4項を確認します。
▼会社法160条4項
156条の株主総会決議の際に、株を買い取って貰える特定の株主は、議決権を行使することは出来ません。
ただし、株主1名だけであり、その者から株式を買い取る場合などは、その他に議決権を行使できる株主はいませんから、議決権を行使することが出来ます。
このあたりは株主平等の原則が効いているためと思われます。
続いて第5項を確認します。
▼会社法160条5項
条文の置き換えになりますが、全株主から株式を取得する場合は158条をそのまま適用のため、全株主宛てに通知または公告が必要ですが、特定の株主から株式を取得する場合は、その株主のみに通知を送ればよいです。
ただし、特定の株主から株式する場合でも、160条2項による通知はその他の既存株主に送る必要があるので注意してください。