まずは第1項を確認します。
▼会社法116条1項
株主側から会社に対して、株を買い取れと請求できる場面をまとめた条文になります。
株の払い戻しは原則、株主総会決議が必要になりますが、会社法116条に該当する場合は、株主総会決議を経るまでもなく株を買い取ってもらうことができます。
では、どのような場面で買い取ってもらうことが出来るのでしょうか。
1号の会社法107条1項1号とは、単一発行会社が、株式に新たに譲渡制限を設ける場面のことです。
つまり、1号の想定している場面とは、元々株式の譲渡が自由にできた会社(公開会社)が、非公開会社になる場面を言っています。
今まで株の売買が自由に出来ていたのに、それが出来なくなるとは株主にとっては大問題です。ですので、株主辞めるので買い取れ!と言うことが出来ます。
続いて2号です。
第108条第1項第4号は、1号と同じく、ある種類の株式に新たに譲渡制限を設ける場面のこと、第108条第1項第7号は、ある種類の株式に新たに全部取得条項を設ける場面のことです。
「第111条第2項各号(1号~3号)に規定する株式」とは、またまた以下の会社を例に説明します。
まず、第111条第2項1号は普通株式に新たに譲渡制限を設ける場合、または新たに全部取得条項を設ける場合、普通株式は株主辞める!と言えます。
第111条第2項2号と3号は、普通株式が譲渡制限または全部取得条項になる場合で、A種優先株式が普通株式を目的とした取得請求権株式または取得条項付株式であった場合、A種優先株式も株主辞めるので買い取れ!と言うことができます。
普通株式に交換する(される)予定だったのに、その普通株式の売買が自由に出来なくなるのであれば、それはA種優先株主にとって大問題であるので、買い取れと言うことが出来ます。
続いて、3号です。
3号は会社法322条2項も関係してきます。
ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合、その種類の種類株主総会での決議が必要でした。
ただし、これは定款で別段の定めをすることで、種類株主総会の決議を省略することが可能です。
つまり、この116条3号については、定款に322条2項の別段の定めがある会社が前提のお話になります。
またまた以下の会社を例に3号のイを説明します。
株式分割をし、A種優先株式だけを100分割する場合を想定してください。
株式分割後のA種優先株式は10,000株になり、一気に普通株主の議決権の10倍を持つことになります。
なんと、持ち株比率が逆転しましたね。株主総会で幅を利かせるのは、今度はA種優先株式になります。
この場合、普通株主は反対株主にあたるので、株主辞めるので買い取れ!と言えます。
まとめますと、以下のことをするときに、損害が出るおそれのある株主は、反対株主にあたります。
続いて第2項を確認します。
▼会社法116条2項
今さら感がありますが・・・株主辞めるので株を買い取れ!と言える株主のことを反対株主と言います。
株式併合や株式分割をする際に、ある種類の株主に損害が出るおそれがある場合であっても、自動的に反対株主たる地位を得られるわけではありません。
具体的には、株主総会に先立って反対の意思を会社に通知し、かつ株主総会で反対することが必要です。
ロは、議決権制限株式で、議案に対して議決権を行使できない株主のことです。
そもそも議決権が無いので、黙って指を加えて見ていなければならない、というわけではなく、反対株主にあたるので、株主辞めると言えます。
2号は上記の株式分割を例にあげれば、取締役会設置会社では株主総会決議事項ではなく、取締役会決議事項です。
つまり、そもそも株主総会を開かずに株式分割が出来てしまいます。そのような場面が2号にあたります。
続いて第3項を確認します。
▼会社法116条3項
2項を読んでいて「おや???」と思われた方も多いのではないでしょうか。
「反対の意思を会社に通知」って言うけど、そもそも、どうやって株式分割や株式併合を行うことを20日前に知るんだ?という疑問があると思います。
その答えがこの3項です。会社に株主に対しての通知義務があるので、その際に知ることが出来ます。
続いて第4項を確認します。
▼会社法116条4項
株主が数百人など多数いる場合は、個別的な通知に非常にコストがかかることがあります。
そのような場合は、公告方法に従って、公告することで株主に対する個別通知を省略することが可能です。
続いて第5項を確認します。
▼会社法116条5項
株主は、買取請求希望の株数・種類株式ならその種類を会社に通知しなければなりません。
116条3項により、「株式分割やりますよ」という通知が、株式分割の効力日の20日前には会社側から株主に対し、通知されるので、通知を受けた日より、効力日の前日までには、会社に買取請求希望の株数・種類株式を知らせてね、という規定です。
株主は、これを行うことで、116条2項1号イの「株主総会に先立って・・・会社に対し通知し・・・」という要件部分を満たすことが出来ます。
続いて第6項を確認します。
▼会社法116条6項
株券発行会社であれば、5項の通知をするなら、株券も会社に提出してね、という規定です。
株券だけ他者に渡ってしまうと、後々面倒なことになりかねないので、この段階で会社に預けておくことになっています。
会社法223条は、「株券喪失登録の請求」の規定ですが、要は株券を失くしたことを会社に届けている株主のことです。
株券をそもそも提出できないので、当たり前と言えば当たり前です。
続いて第7項を確認します。
▼会社法116条7項
株主側から、株式買取請求の中止を申し込める規定です。
株式買取請求の中止を申し込むことはできますが、会社が承諾した場合にのみ、可能です。
株式買取申込をしちゃった後は会社の承諾がいる、というある種当たり前の規定です。
続いて第8項を確認します。
▼会社法116条8項
会社側から、株式買取請求の原因である事項をキャンセルできる規定です。
想定外の数の株主から、株式買取請求がなされた場合をイメージしてください。
会社としては、こんなに沢山、株式買取請求権がきているなら、やっぱ株式分割はやめよう・・・と、引き返すことができ、その場合は株式買取請求権も無かったことになります。
財源規制の問題もあり、資金的に買い取ることが出来ない場合もあるので、このような定めも制度として合理的です。
続いて第9項を確認します。
▼会社法116条9項
会社法133条は「株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録」ですが、株式買取請求権をした場合は、会社の方で株主名簿のメンテナンスを当然するからだと思われます。