1.会社法427条の条文
第427条(責任限定契約)
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第424条の規定にかかわらず、株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この条及び第911条第三項第二十五号において「非業務執行取締役等」という。)の第423条第一項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる。
2
前項の契約を締結した非業務執行取締役等が当該株式会社の業務執行取締役等に就任したときは、当該契約は、将来に向かってその効力を失う。
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第425条第三項の規定は、定款を変更して第一項の規定による定款の定め(同項に規定する取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)と契約を締結することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)」とあるのは、「取締役」と読み替えるものとする。
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第一項の契約を締結した株式会社が、当該契約の相手方である非業務執行取締役等が任務を怠ったことにより損害を受けたことを知ったときは、その後最初に招集される株主総会(当該株式会社に最終完全親会社等がある場合において、当該損害が特定責任に係るものであるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会)において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一
第425条第二項第一号及び第二号に掲げる事項
二
当該契約の内容及び当該契約を締結した理由
三
第423条第一項の損害のうち、当該非業務執行取締役等が賠償する責任を負わないとされた額
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第425条第4項及び第5項の規定は、非業務執行取締役等が第一項の契約によって同項に規定する限度を超える部分について損害を賠償する責任を負わないとされた場合について準用する。
2.会社法427条1項
まずは第1項を確認します。
▼会社法427条1項
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第424条の規定にかかわらず、株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この条及び第911条第三項第二十五号において「非業務執行取締役等」という。)の第423条第一項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる。
427条は責任限定契約についての定めで、業務執行取締役でない取締役、会計参与、監査役、会計監査人と会社の間で結べる契約になります。任務懈怠責任より生じた賠償責任を、一定の額までとすることができます。この契約を結ぶためには、定款にその旨を記載しておく必要があります。
上場企業の多くは定款に責任限定契約を締結することができる内容を記載しています。具体例としては以下です。
当会社は、社外取締役との間で会社法第423条第1項の賠償責任について法令に定める要件に該当する場合には賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく賠償責任の限度額は、金1万円以上であらかじめ定めた額と法令の定める最低責任限度額とのいずれか高い額とする。
(ミクシィ 定款 第32条(社外取締役の責任の限定))
責任限定契約を結ぶことで、賠償額を一定の額までとすることができるようになるため、外部の役員を招聘しやすくなります。
3.会社法427条2項
続いて第2項を確認します。
▼会社法427条2項
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前項の契約を締結した非業務執行取締役等が当該株式会社の業務執行取締役等に就任したときは、当該契約は、将来に向かってその効力を失う。
責任限定契約を結べるのは、そもそも業務執行取締役でない取締役なので、業務の執行を行う取締役(代表取締役になる場合や、使用人兼務取締役になる場合など)になるならば、なった時から責任限定契約は無効になります。遡及効はないので、業務執行取締役になる直前までの責任限定契約の効力は有効になります。
4.会社法427条3項
続いて3項を確認します。
▼会社法427条3項
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第425条第三項の規定は、定款を変更して第一項の規定による定款の定め(同項に規定する取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)と契約を締結することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)」とあるのは、「取締役」と読み替えるものとする。
責任限定契約を締結するようになるには定款に定める必要があり、その定款の変更は株主総会の特別決議で行います。
425条3項を準用しているので、監査役がいる場合は監査役の全員の同意が必要になります。監査役会設置会社や委員会設置会社も監査(等)委員の全員の同意が必要です。
監査役がいない会社であれば、これらの同意はそもそも不要です。
5.会社法427条4項
続いて4項を確認します。
▼会社法427条4項
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第一項の契約を締結した株式会社が、当該契約の相手方である非業務執行取締役等が任務を怠ったことにより損害を受けたことを知ったときは、その後最初に招集される株主総会(当該株式会社に最終完全親会社等がある場合において、当該損害が特定責任に係るものであるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会)において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一
第425条第二項第一号及び第二号に掲げる事項
二
当該契約の内容及び当該契約を締結した理由
三
第423条第一項の損害のうち、当該非業務執行取締役等が賠償する責任を負わないとされた額
実際に、責任限定契約を締結した取締役が任務怠ったことで損害が発生した場合は、株主総会で一定の事項を開示する必要があります。
すなわち、最低責任限度額、当該取締役と締結した責任限定契約の内容と締結理由、損害から最低責任限度額を引いた額を株主総会で開示しなければなりません。
単に開示すればよく、別段決議を取る必要はありません、
6.会社法427条5項
最後に5項を確認します。
▼会社法427条5項
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第425条第4項及び第5項の規定は、非業務執行取締役等が第一項の契約によって同項に規定する限度を超える部分について損害を賠償する責任を負わないとされた場合について準用する。
実際に責任限定契約が発動したのち、退職慰労金等を与える場合や有利発行で与えられたストックオプションを行使・譲渡する場合にも株主総会での決議が必要になります。
詳細は425条4項と425条5項のリンク先をご覧ください。
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