まずは第1項を確認します。
▼会社法111条1項
1項は、会社法110条で解説した内容の種類株式発行会社verです。
108条1項六号(当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。)は、ある種類の株式に取得条項付株式を設定する場面、既に取得条項付株式を設定しているが内容を変更する場面が該当します。
普通株式とA種優先株式の2種類を発行していて、A種優先株式に取得条項付株式を設定する場合は、
・株主総会の特別決議
・A種優先株主の全員の同意
が必要になります。
続いて第2項を確認します。
▼会社法111条2項
111条2項については、若干複雑な作りなので、1号と2号、3号は別に解説します。
第108条第1項第4号と7号はそれぞれ「譲渡制限株式(4号)」、「全部取得条項付株式(7号)」のことです。
この2つを新たに定款に設ける場合は、種類株主総会決議を経ないと無効ですと定められています。
普通株式とA種優先株式の2種類を発行していて、A種優先株式に「譲渡制限株式」と「全部取得条項付株式」を設定する場合は、
・株主総会の特別決議
・A種優先株主による種類株主総会決議
が必要になります。
ちなみに、A種優先株主による種類株主総会決議ですが、A種優先株式に「譲渡制限株式」を設ける場合は「特殊決議(会社法324条3項1号)」、A種優先株式に「全部取得条項付株式」を設ける場合は「特別決議(会社法324条2項1号)」ですので、ご注意ください。
2号は「第108条第2項第5号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主」、3号は「第108条第2項第6号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主」とあります。
例えば、A種優先株式に取得請求権(あるいは取得条項)が付いており、取得請求権を行使した場合、普通株式を取得できる場合を想定してください。
取得予定の普通株式が「譲渡制限株式」になった場合、A種優先株主からしたら、自由に売買できなくなるわけですので大問題です。
このような事情があるので、普通株式が「譲渡制限株式」になるけど、A種優先株式は普通株式を取得予定なので、A種優先株主の了承も取っておいてね、という整理になります。
必要な決議としては、
・株主総会の特別決議
・普通株主による種類株主総会決議(特殊決議(会社法111条2項1号および324条3項1号))
・A種優先株主による種類株主総会決議(特殊決議(会社法111条2項2号および会社法324条3項1号))
になります。