会社法238条(募集事項の決定)を解説します。




会社法238条は募集事項の決定について規定している条文です。







1.会社法238条の条文

第238条(募集事項の決定)
株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
募集新株予約権の内容及び数
募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第六百七十六条各号に掲げる事項
前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第百十八条第一項、第百七十九条第二項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め
募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
第一項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
第一項第三号に規定する場合において、同号の払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき。
種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を目的とする募集新株予約権を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。



2.会社法238条1項


まずは第1項を確認します。


▼会社法238条1項

株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。
募集新株予約権の内容及び数
募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第六百七十六条各号に掲げる事項
前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第百十八条第一項、第百七十九条第二項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

株式の発行の際と同様の趣旨になります(199条1項)。

238条1項で新株予約権の「募集事項」が定義されました。

会社が新株予約権の発行を行う際には、1~7号の募集事項を定める必要があります。

募集事項には必須の項目とそうでない項目があります。



1号 募集新株予約権の内容及び数

236条1項で規定されている新株予約権の内容と新株予約権の個数を決める必要があります。こちらは常に必要な項目になります。


2号 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨

ストックオプションの場合は通常、無償としますので、その場合は、無償と定めます。


3号 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権一個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法

新株予約権の発行時に金銭を払い込むこともあります(有償新株予約権)。有償新株予約権の場合は、払込金額を定めます。


4号 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)

割当日とは新株予約権の権利者になる日のことです。割当日は常に必要な項目です。



5号 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日

有償新株予約権限定の規定ですが、新株予約権の発行時に払い込みが必要な場合でも、払込期日は必須の項目ではありません。ただ、実務的には入っています。

246条1項との絡みもありますので、確認してみてください。


6号 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第六百七十六条各号に掲げる事項

新株予約権付社債の規定です。新株予約権に社債が付いているので、その社債の内容も決めましょうということです(676条)。


7号 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第百十八条第一項、第百七十九条第二項、第七百七十七条第一項、第七百八十七条第一項又は第八百八条第一項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

新株予約権付社債に118条1項(新株予約権買取請求)、179条2項(株式等売渡請求)、777条1項(新株予約権買取請求)、808条1項(新株予約権買取請求)について、別段の定めをする場合は、その旨を定める必要があります。



3.会社法238条2項


続いて第2項を確認します。


▼会社法238条2項

募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

1項の募集事項の決定は、株主総会の特別決議が必要です。公開会社の場合は240条1項を確認してみてください。



4.会社法238条3項


続いて第3項を確認します。


▼会社法238条3項

次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
第一項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
第一項第三号に規定する場合において、同号の払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき。

新株予約権発行時に、無償と有償を決めますが、無償であることが特に有利な場合、また有償だがその金額が特に有利な場合は、取締役は株主総会で説明義務を負います。



5.会社法238条4項


続いて第4項を確認します。


▼会社法238条4項

種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を目的とする募集新株予約権を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。


4項は種類株式発行会社限定の規定ですが、下の会社を例にします。


株式会社X
・普通株式 1,000株(※譲渡制限株式)
・A種優先株式 100株


X社は普通株式にのみ譲渡制限が付いています。

普通株式を目的とした第1回新株予約権を発行するとします。

この場合、全体の株主総会だけでなく、普通株式による種類株主総会も必要です。

この規定の趣旨は、199条4項と同じなので、詳細はそちらを確認してみてください。

199条4項同様、例外があり、定款で別段の定めをすることで、普通株主による種類株主総会をせずに、普通株式を目的とした新株予約権を発行することが出来ます。



6.会社法238条5項


続いて第5項を確認します。


▼会社法238条5項

募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。

募集ごとに均等に募集事項を定める必要があります。会社法コンメンタール6によれば、募集事項が異なれば、別個の新株予約権と解されるようです。





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