本来、代表権のない取締役がした法律行為は、会社に帰属しません。
ただ、社長や副社長といった紛らわしいポストを与えていた場合、相手方が会社の代表権ある者と勘違いするのも無理はありません。
第三者が善意であれば、会社として責任を負うことになります。
ちなみに、判例では、単なる使用人にも代表取締役という肩書きを与えた場合、354条が適用されるということです(伊藤靖史『LEGAL QUEST会社法』 有斐閣.)。
平成22年31問目(会社法)
次の対話は,取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者(以下「表見取締役」という)の責任に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次の学生の解答のうち,適切なものはどれか。
肢 | 問い | 正誤 |
ア | 教授:表見取締役が故意又は過失によりその登記につき承諾を与えていたときは、当該表見取締役は,会社法第908条第2項の類推適用により,自己が取締役でないことをもって善意の第三者に対抗することができず,会社法第429条第1項の「取締役」に該当し,同項所定の第三者に生じた損害を賠償する責任を免れないとの見解があります。 この見解が,会社法第908条第2項を直接適用するとしていないのは、なぜですか。 学生:会社法第908条第2項の「不実の事項を登記した者」には,当該登記を申請した会社だけではなく,不実の登記行為に加功した者も含まれるからです。 |
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イ | 教授:この見解にいう表見取締役には,代表取締役だけでなく,代表権のない取締役も含まれますか。 学生:登記申請の義務があり,登記の解怠によって過料の制裁を受ける者は、代表権のある取締役ですので,この見解にいう表見取締役には,代表権のない取締役は含まれません。 |
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ウ | 教授:会社法第908条第2項の「善意」の意義について,登記と事実とが相違していることを知らないことをいうとの考えがありますが,そのような考えを前提として,この見解によると,取引に関係ない,いわゆる事実的不法行為の債権者は,表見取締役に対し責任を追及することができますか。 学生:いわゆる事実的不法行為の債権者は,通常は表見取締役の登記に信頼を置くことはないので,特段の事情がなければ,責任を追及することはできません。 |
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エ | 教授:一方,会社法第429条第1項の責任の法的性格については,取締役の会社に対する任務解怠があれば,第三者に対する故意・過失がなくても責任が生じ得る法定の特別責任であるとの考えがありますが,そのような考えは、この見解と論理的な関係がありますか。 学生:会社法第429条第1項の責任を法定の特別責任と解することにより,会社法第908条第2項を通して外観に対する信頼を問題にすることができると説明することができるので,そのような考え方は,この見解と論理的な関係があります。 |
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オ | 教授:この見解によると,会社法第429条第1項の「役員等がその職務を行うについて」の要件については,どのように考えますか。 学生:表見取締役は,真実,取締役ではないものの,取締役としての権限・義務がないことをもって善意の第三者に対抗することができないので、何もしないことが取締役がその職務を忘っていることになると考えます。 |
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