会社法244条の2(公開会社における募集新株予約権の割当て等の特則)を解説します。




会社法244条の2は公開会社における募集新株予約権の割当て等の特則について規定している条文です。







1.会社法244条の2の条文

第244条の2(公開会社における募集新株予約権の割当て等の特則)
公開会社は、募集新株予約権の割当てを受けた申込者又は前条第一項の契約により募集新株予約権の総数を引き受けた者(以下この項において「引受人」と総称する。)について、第一号に掲げる数の第二号に掲げる数に対する割合が二分の一を超える場合には、割当日の二週間前までに、株主に対し、当該引受人(以下この項及び第五項において「特定引受人」という。)の氏名又は名称及び住所、当該特定引受人についての第一号に掲げる数その他の法務省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、当該特定引受人が当該公開会社の親会社等である場合又は第二百四十一条の規定により株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えた場合は、この限りでない。
当該引受人(その子会社等を含む。)がその引き受けた募集新株予約権に係る交付株式の株主となった場合に有することとなる最も多い議決権の数
前号に規定する場合における最も多い総株主の議決権の数
前項第一号に規定する「交付株式」とは、募集新株予約権の目的である株式、募集新株予約権の内容として第二百三十六条第一項第七号ニに掲げる事項についての定めがある場合における同号ニの株式その他募集新株予約権の新株予約権者が交付を受ける株式として法務省令で定める株式をいう。
第一項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
第一項の規定にかかわらず、株式会社が同項の事項について割当日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、第一項の規定による通知は、することを要しない。
総株主(この項の株主総会において議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が第一項の規定による通知又は第三項の公告の日(前項の場合にあっては、法務省令で定める日)から二週間以内に特定引受人(その子会社等を含む。以下この項において同じ。)による募集新株予約権の引受けに反対する旨を公開会社に対し通知したときは、当該公開会社は、割当日の前日までに、株主総会の決議によって、当該特定引受人に対する募集新株予約権の割当て又は当該特定引受人との間の前条第一項の契約の承認を受けなければならない。ただし、当該公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため緊急の必要があるときは、この限りでない。
第三百九条第一項の規定にかかわらず、前項の株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。



2.会社法244条の2の1項


まずは第1項を確認します。


▼会社法244条の2の1項

公開会社は、募集新株予約権の割当てを受けた申込者又は前条第一項の契約により募集新株予約権の総数を引き受けた者(以下この項において「引受人」と総称する。)について、第一号に掲げる数の第二号に掲げる数に対する割合が二分の一を超える場合には、割当日の二週間前までに、株主に対し、当該引受人(以下この項及び第五項において「特定引受人」という。)の氏名又は名称及び住所、当該特定引受人についての第一号に掲げる数その他の法務省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、当該特定引受人が当該公開会社の親会社等である場合又は第二百四十一条の規定により株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えた場合は、この限りでない。
当該引受人(その子会社等を含む。)がその引き受けた募集新株予約権に係る交付株式の株主となった場合に有することとなる最も多い議決権の数
前号に規定する場合における最も多い総株主の議決権の数

本条は、206条の2の1項の考え方と同じです。

要は、新株予約権を引き受けた者が、その新株予約権を行使なり、取得の対価として株式の交付を受けた場合に、既存株主の議決権の過半数を奪うおそれがある場合は、既存株主に通知する必要があります。

1号と2号に最も多いというフレーズがありますが、これの意味を自分なりに解釈してみました(206条の2の1項には無かったフレーズですし、手持ちの文献にも特に解説がなかったため私見となります。)。

新株予約権は行使した際に、1個あたり株式1株と決めている場合もありますが、交付する株式の算定方法を決めている場合もあります。



会社法236条1項1号

当該新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法


Aの場合に該当する場合は算定方式1で、Bの場合は算定方式2、といった新株予約権もあり、新株予約権の行使の段階になって初めて、交付する株式の数が確定する新株予約権もあります。

新株予約権の発行段階においては、どちらの算定方式を使用するか不明です。

そのため、算定方式1と2の内、多く株式を交付する方を選択せよ、というのが1号の趣旨だと思います。

交付株式は、2項で定義されていますので、続きます。



3.会社法244条の2の2項


続いて第2項を確認します。


▼会社法244条の2の2項

前項第一号に規定する「交付株式」とは、募集新株予約権の目的である株式、募集新株予約権の内容として第二百三十六条第一項第七号ニに掲げる事項についての定めがある場合における同号ニの株式その他募集新株予約権の新株予約権者が交付を受ける株式として法務省令で定める株式をいう。

1項に出てくる交付株式は、2項で定義されています。

新株予約権は、権利行使すると株式が交付されるものが多いです。

その他に、新株予約権の取得の対価として、株式が交付されたり、別の新株予約権(付社債)の交付を受けられたりする新株予約権もあります。

詳細については、会社法施行規則55条の3を参照してみてください。



4.会社法244条の2の3項


続いて第3項を確認します。


▼会社法244条の2の3項

第一項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

1項の通知は株主多数の場合などは、公告方法に従って公告すれば、個別的な通知はする必要がありません。



5.会社法244条の2の4項


続いて第4項を確認します。


▼会社法244条の2の4項

第一項の規定にかかわらず、株式会社が同項の事項について割当日の二週間前までに金融商品取引法第四条第一項から第三項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、第一項の規定による通知は、することを要しない。

1項に該当する場合であって、金融商品取引法上の届け出をしている会社は通知(もちろん公告も)する必要はありません。



6.会社法244条の2の5項


続いて第5項を確認します。


▼会社法244条の2の5項

総株主(この項の株主総会において議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が第一項の規定による通知又は第三項の公告の日(前項の場合にあっては、法務省令で定める日)から二週間以内に特定引受人(その子会社等を含む。以下この項において同じ。)による募集新株予約権の引受けに反対する旨を公開会社に対し通知したときは、当該公開会社は、割当日の前日までに、株主総会の決議によって、当該特定引受人に対する募集新株予約権の割当て又は当該特定引受人との間の前条第一項の契約の承認を受けなければならない。ただし、当該公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、当該公開会社の事業の継続のため緊急の必要があるときは、この限りでない。

こちらについては、会社法206条の2の4項と同じ趣旨ですので、そちらを参照してみてください。



7.会社法244条の2の6項


続いて第6項を確認します。


▼会社法244条の2の6項

第三百九条第一項の規定にかかわらず、前項の株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。

こちらについても、会社法206条の2の5項と同じ趣旨ですので、そちらを参照してみてください。




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