会社法329条(選任)を解説します。




会社法329条は選任について規定している条文です。







1.会社法329条の条文

第329条(選任)
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
監査等委員会設置会社においては、前項の規定による取締役の選任は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別してしなければならない。
第一項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この項において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。



2.会社法329条1項


まずは第1項を確認します。


▼会社法329条1項

役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

会社の役員と会計監査人は、株主総会の決議によって選任されます。

ちなみに会計監査人は役員ではありませんのでご注意ください。

役員

・取締役

・会計参与

・監査役



3.会社法329条2項


続いて第2項を確認します。


▼会社法329条2項

監査等委員会設置会社においては、前項の規定による取締役の選任は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別してしなければならない。

主に上場企業が監査等委員会設置会社に移行しますが、監査等委員である取締役とそうでない取締役の選任議案は分けて選任しています。



4.会社法329条3項


続いて第3項を確認します。


▼会社法329条3項

第一項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この項において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。

補欠取締役に関する規定です。

法務省令とは会社法施行規則96条のことです。

例えば、取締役会設置会社で取締役が3名の会社の場合、補欠取締役として選任されたAがいるとします。

取締役が1名欠けた場合、法律上、取締役会の員数を欠くことになるので、補欠取締役としてAが就任することになります。

上記の例で、取締役が4名いた場合は、1名欠けてもまだ3名の取締役がいるので、Aは補欠取締役として就任することはありません。

仮に、「取締役の員数は4名以上」という規定があった場合は、定款上、取締役の員数を欠くことになるので、Aは補欠取締役として就任することになります。

通常、取締役と補欠取締役の選任議案は、分けていることが多いです。



5.司法書士試験の過去問に挑戦


平成29年31問目(会社法)

次の対話は,補欠の監査役に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,誤っているものはどれか。

なお,問題文に明記されている場合を除き,定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして,解答すること。

問い 正誤
教授:任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとする旨の定教の定めがない場合であっても,この補欠の監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時まで短縮することができますか。
学生:そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがない場合には,株主総会の決議によっても,その補欠の監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時まで短縮することはできません。
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教授:それでは,そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがある場合には、この補欠の監査役の任期はどうなりますか。
学生:そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがある場合において、選任の際に,株主総会の決議によって,その監査役が補欠であってその任期を退任した監査役の任期の満了する時までとする旨が定められたときは,その補欠の監査役の任期は,退任した監査役の任期の満了する時までとなります。
クリック



教授:次に,株主総会の決議によって,会社法又は定款で定めた監査役の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の監査役を選任することができますが、例えば,5名以内の監査役を置くという定款の定めがある監査役会設置会社であるA株式会社(以下「A社」という。)の5名の監査役のうち,3名が社外監査役である場合において,社外監査役ではなく,かつ,常勤の監査役でもない監査役1名が死亡したときは,補欠の監査役は,監査役に就任することができますか。
学生:いいえ。会社法で定めた監査役の員数及び定款で定めた監査役の員数をいずれも満たしているので,補欠の監査役は,監査役に就任することができません。
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教授:それでは,A社の5名の監査役のうち、3名が社外監査役である場合において,常勤の監査役ではない社外監査役1名が死亡したときは,補欠の社外監査役は,社外監査役に就任することができますか。
学生:はい。会社法で定めた社外監査役の員数を満たしていないので,補欠の社外監査役は,社外監査役に就任することができます。
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教授:最後に,A社の5名の監査役のうち,1名だけが社外監査役ではなく。かつ,常勤の監査役である場合において,その常勤の監査役が死亡したときは,補欠の監査役は,監査役に就任することができますか。
学生:はい。会社法上,監査役会は,監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないので、補欠の監査役は監査役に就任することができます。
クリック



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