定款の事業目的を決める時に気を付けたい5つのこと

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定款の事業目的を決める時に気を付けたい5つのこと
執筆者:司法書士 坪井 宏太
更新日時:2018.05.06
   
   
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会社を設立する時に事業目的はどうやって決めればいいのか、新たに事業を追加するにはどうすればいいのか、そもそも定款とは何なのか、上場企業の定款を数百通みてきた司法書士の観点から、定款の具体的な中身について解説します。

 目次

1.定款とは何か

まず始めに、そもそも定款とは何かという点ですが、定款は以下のように定義できます。

定款とは、株式会社の組織と活動に関する根本規則をいう。

(神田、2017、会社法、p44)

とあるように、定款は会社の基本的な規則をまとめている書類(データ)になります。

会社の商号、本店所在地などや取締役会を設置するのか、監査等委員会設置会社なのか、色々なことを定めておきます。

ちなみに、この神田先生の「会社法」は、実務上でも頻繁に利用しています。

1-1.定款に記載する事項

定款には

・必ず記載しなければいけない事項(絶対的記載事項
・定めたなら定款に記載しないと効力が生じない事項(相対的記載事項
・記載してもしなくてもどっちでもいい事項(任意的記載事項

があります。

絶対的記載事項

絶対的記載事項は定款に必ず記載しなければならない事項です。以下の記載がないと定款全体が無効となります。

参考となる条文は会社法27条、37条です。

絶対的記載事項
1.目的
2.商号
3.本店の所在地
4.設立に際して出資される財産の価額または最低額
5.発起人の氏名または名称および住所
6.発行可能株式総数

設立時点で公開会社となる株式会社の設計にするなら、設立時発行済み株式総数の数は発行可能株式総数の4分の1以上にしておかないといけません。(会社法37条3項)

相対的記載事項>

相対的記載事項は記載しなくても、定款全体が無効になることはないが、効力が生じないものになります。

相対的記載事項の一例
1.公告方法(官報公告以外のもの)
2.機関設計
3.役員の任期
4.単元株式数
5.株主総会の決議要件
6.種類株式の発行
7・取締役会の決議省略
など

相対的記載事項は、会社法全体に渡って規定があり多数になるので、一例を記載しています。

例えば、単元株式数は会社法188条に規定がありますが、「(単元株式数を設定したなら)定款に定めることができる。」となっているので、定款に定めて初めて効力が生じるものになります。

任意的記載事項

任意的記載事項は会社法の規定に違反しない限り定款に規定することができる事項になります。

任意的記載事項の一例
1.役付取締役の規定
2.役員の人数規定
3.配当金の除斥期間
など

様々な事項を記載できますので、上場企業の定款に記載されている任意的記載事項の一部を例としてあげました。

2.事業目的を決める時に気を付けたい5つのこと

いよいよ、本題です。

ここでは、実際に定款の目的を決める時に気を付けたい実務上の点について解説します。

2-1.有効な事業目的か

特に会社設立時に気を付けたい点です。

設立時の定款は公証役場で認証を受けなければ効力が生じません。

公証人の先生が原始定款に問題がないかチェックしてくれますが、事業目的に疑義が生じた場合、直しが入ることもあります。

上場企業の事業目的はこうなっていますよ、と事例をつけてあげれば、そのようなことにはならず、双方にとってスムーズに会社設立を進めることができます。

上場企業の事業目的は以下のサイトから検索できます。

⇒上場企業の事業目的検索はこちら(http://teikan.tokyo)

以下については、少々マニアックになりますが、時々ご質問を受ける論点になるので解説します。興味のない方は読み飛ばしてください。

定款の事業目的に記載していない事業を行った場合、それは有効かという問題があります。会社法は民法の特別法にあたるので、会社法に記載のないことは基本的に民法の規定が適用されます。

法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

民法34条(法人の能力)

例えば「仮想通貨の取引所運営」を記載していない会社がその事業を行った場合、その事業は有効か。民法34条には定款に記載していない事業目的を会社が行った場合、有効な取引にはならない、と記載されているようにも読めますが、取引の安全の確保と過去の判例の趣旨からすると、有効となるはずです。また、学説上も有効とする見解が多数です。(神田、2017、会社法、p5)

ただし株主による行為差止の対象になり得ますのでご注意ください。(会社法360条)

2-2.今後の事業展開を意識しているか

今後、行おうと考えている事業は入れておいたほうが手間もコストもかかりません。

例えば、ワインバーなどの飲食店の経営ならば、将来、インターネットで販売する予定があるなら「インターネットを利用した通信販売業務ならびに通信販売の仲介・情報提供業務」なども事業目的に入れておいたほうがよいですし、ワインに関するセミナーもするつもりなら「各種イベント、各種セミナーの企画、制作および運営」といったものも入れておくと後々便利です。

2-3.統一感のある文言か

事業目的は登記される項目になるので、申請書と株主総会議事録に記載した内容がそのまま登記されます。また、法務局に行けば誰でも会社の謄本を取得できるので、見た目の統一感にも気を配りたいところです。

・重複した内容は記載されていないか
・「及び」と「および」が混在していないか
・「~~業」と「~~事業」が混在していないか(混在する場合もあります)

2-4.許認可を意識した事業目的か

許認可を取得する際に、定款に記載されていなければならない文言があります。

例えば、有料職業紹介事業、古物商許可、介護事業の事業者指定を受ける場合などです。

実際に、許認可の申請をする所轄官庁に問い合わせるか、その許認可を専門にしている行政書士の先生に依頼するのが良いと思います。

2-5.定款変更の手続きは適切に行ったか

法律上の要件を満たしたうえで定款の変更を行っていることを最後のポイントとします。

後記の「定款に関するよくあるご質問」でも記載していますが、会社が有効に定款の変更を行う場合以下の手続きが必要になります。

  1)取締役が定款を作る
  2)株主総会招集の通知
  3)株主総会で決議

適切に株主総会を開き、定款変更決議を行ってください(場合によっては書面決議で実際開催しない)。

3.まとめ

以上、定款を作る上での主な注意点をまとめました。実務上、気を付けたいところは、やはり許認可関係の事業目的です。

事業目的の変更登記は、登録免許税だけでも3万円かかってしまいます。不安な場合は専門家に相談の上、定款を修正することをおすすめします。

4.定款に関するよくあるご質問

 

質問:会社の定款が無いのですが、どうすればよいでしょうか。
回答:会社の定款を紛失してしまった、というご相談は時々あります。会社の方で復元して置いておけばいいわけではありません。そのように作り直しただけでは無効な定款になります。
新しく定款を作り直し、株主総会で決議を取らなければ、会社法上有効な定款にはなりません。
流れとしては、
  1)取締役が定款を作る
  2)株主総会招集を通知する
  3)株主総会で決議をする
となります。
実際に、定款を紛失してしまい、会社法の要件を満たすよう定款の作成・株主総会決議を実施しようとお考えの場合はご相談ください。
 
質問:定款には改定履歴がないとダメなのでしょうか。
回答:法律上、改定履歴を記録しておかなければならない、という決まりはないので、記載する必要はありません。上場企業の定款には改定履歴を書いている会社もありますが、改定履歴はなくても問題ありません。
 
質問:定款には目次がないとダメなんでしょうか。
回答:目次についても改定履歴と同様、記載してもしなくてもどちらでも構いません。
 
質問:目的は何個ぐらいまで書いていいのでしょうか。
回答:事業目的の個数に制限はありません。極端に多いのは無効になる可能性があります。
スタートアップベンチャーの場合、事業目的を書きすぎると結局何をやりたい会社なのかボヤけてしまい、投資家から敬遠されてしまう可能性があります。多くても20個ぐらいに納めておくのが良いと考えます。
ちなみに、100個の事業目的を記載している上場企業もあります(BEENOS株式会社、3328、東証一部)し、事業目的数が1個だけの会社もあります(株式会社日本取引所グループ、8697、東証一部)。
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