取締役の任期~スタートアップベンチャー編~

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取締役の任期~スタートアップベンチャー編~
執筆者:司法書士 坪井 宏太
更新日時:2019.01.04
  
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取締役の任期は何年が適切なのでしょうか。定款にも記載する取締役の任期について、特にスタートアップベンチャー目線で、適切な任期は何年なのか解説します。


 目次

1.取締役の任期は何年までOKなのか

取締役の任期は原則2年ですが、スタートアップベンチャーのような非公開会社の場合、取締役の任期は定款で定めれば最高で10年まで伸長することが可能です。(会社法332条1項、2項)

短くすることも可能で、上場企業では取締役の任期は1年または2年としている会社がほとんどです。

2.取締役の任期 ~1年 VS 10年~

取締役の任期を1年にした場合と10年にした場合のメリット・デメリットを双方の立場から解説します。

2-1.コスト

取締役の任期を10年にしている会社であれば、10年間は任期が続くので、10年に一度再選を行えば法律上も問題ありません。

一般的な中小企業であれば、ほとんどの会社は取締役の任期を10年にしているのではないでしょうか。

逆に取締役の任期を1年にしている会社であれば、毎年定時株主総会で取締役を選任し登記しないといけませんので、単純にコスト面をみれば、任期10年の方がメリットがあります。

2-2.リスク

コスト面では任期10年に軍配が上がりました。では、スタートアップベンチャーで取締役の任期を10年にした場合は、どのようなリスクが発生するのでしょうか。

通常、スタートアップベンチャーの取締役には報酬が支払われます。ここでは、月額報酬50万円、年額にして600万円の報酬が支払われている場合を例にします。

ある会社の代表取締役は、徐々にサービスが拡大してきたため、新たに取締役を一人入れようと考えました。優秀なエンジニアということで投資家から紹介され、面談をしてみると確かに優秀そうな人物であったため、ぜひこの人と一緒に事業を進めていきたい!と考えました。

しかし、一緒に仕事を始めてみたら、期待していたアウトプットがされず、しかも性格的に一緒に仕事を進めることが難しい人物だったため、これ以上この人と事業を進めるたくない、会社を辞めてもらおう、という考えに至ったとします。

ここで初めて任期10年の問題が顕在化します。

10年間は取締役として、会社の経営を委任している状態ですので、辞めて欲しくなったとしても、本人が辞任しない限り、辞めてもらうことはできません。

株主総会で解任の手続きをすればいいじゃないか、と考える方もおられると思いますが、解任決議で取締役を辞めさせた場合、登記簿謄本に「●年●月●日解任」という文言が記載されてしまいます。

登記簿は法務局へいけば誰でも写しを入手できますので、「解任」の文言が謄本に載ってしまうと、会社内部で何かしらの問題があったというのが外部に知られてしまいます。

通常、VC等から出資を受ける際には、現状の登記簿などを提出しますので、会社内部で何かしらの問題が起こっていると判断されます。

また、デューデリジェンスや監査が入った場合に、会社内部のことを徹底的に調べられます。

結果として、出資を見送られてしまうことになりかねません。

このように、ベンチャー界隈では解任」は避けるべきものという認識があるので、あえて「解任」を選択したということは余程何かがあったに違いないという印象を抱かせることになります。

私もスタートアップベンチャーに関しては、「解任」の登記が入っている会社は極僅かしか知りません。

リスクに関しては任期1年に軍配があがったようです。

2-3.損害賠償

もう一点発生しうる任期10年のデメリットとしては、取締役側から損害賠償を請求される可能性があります。

こちらの根拠は会社法第339条です。

会社法第339条
1. 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2. 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

取締役の任期が10年ということは、会社側から10年間の給料を保証していることと同じと考えられます。

任期10年のところ、1年で解任をした場合、最悪残りの任期9年分の報酬を請求され、それを支払う義務も発生してしまう可能性があります。

つまり、今回の例であれば、年額報酬600万円×10年分=6000万円の給料を保証しているようなものです。

解任の文言が登記簿に載る、損害賠償請求がされる可能性があるという2つのデメリットが任期10年には存在するということを認識いただけたのではないでしょうか。

任期を短く設定していた場合、上記の損害賠償請求はどうなるのでしょうか。

定時株主総会でその取締役を再任しなければ任期満了退任になるので、自動的に取締役を辞めてもうらことができます。

こちらは登記簿には「●年●月●日退任」と載りますし、一般的に役員が会社を去る際に登記される文言なので問題になることはありません。

マレにスタートアップベンチャーでも役員の任期を10年にしている会社もありますが、ほとんどが1年または2年にしています。

投資をする際に、役員の任期をチェックしているVCも実際あります。投資をする条件として役員の任期を2年に変更することを求めてくる場合もあります。

今現在、取締役1名であれば、取締役任期は気にすることはありませんが、外部のメンバーを取締役に入れるのであれば、任期について検討する必要があると考えます。

3.まとめ

役員の任期について、長い場合と短い場合を比較しましたが、スタートアップベンチャーであれば、短い任期のほうがメリットは多いです。長い任期のメリットは唯一、コストが安くなるという点のみなので、会社設立時のご面談時やご相談を受けた際には、任期を短くするようご説明しています。

会社法の手続きにはどちらかを選択するかでメリットとデメリットが必ず存在してきます。楽な方を選択した場合、実務上、何かしらのデメリットがありますのでご注意ください。

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